無情の琵琶 戯作者喜三郎 覚え書
出版社:PHP文芸文庫
京の呉服屋の三男坊ながら、戯作者を夢見る喜三郎に、婿入りの話が持ち込まれた。
しかしその相手には、許嫁が短命に終わるという「婿殺し」の異名があり、戸惑う喜三郎は、知人の寺に相談に行く。するとそこには見知らぬ琵琶法師がいて、「救うべきは、その娘だ」と告げられるー。芝居小屋の怪『鴻鵠楼の怪』、拐かされる幼子『子隠の辻』、人の心を狂わせる妖刀『蜘蛛手切り』そして、『呼魂の琵琶』・・・・。
京で大人気の芝居誕生に秘められた、悲しい真実を巡る時代ミステリー。
室町妖異伝 あやかしの絵師奇譚
出版社:新潮社
妻を救うため、絵師は〈京の闇〉に踏み込んだー。異界が見える絵師土佐光信は、都の空に不気味なひび割れを見た。そんな折、妻が囚われの身に。光信は心優しき友箕面忠時や、不思議な女〈つづれ〉の力を得て、見えざる戦いに挑んでいく。幽鬼が群れ、地上に慟哭が満ちた時、謎の神獣が姿を現した。瓦解に瀕した都を守るため、光信が取った命がけの最終手段とは・・・・。感動を呼ぶ傑作長編。
この作品は「幽玄の絵師 百鬼遊行絵巻」の続編です。
幽玄の絵師 百鬼遊行絵巻
出版社:新潮社
都の闇に跋扈する、人ならぬもの鬼の如きもの・・・。妖異が見える異能の絵師土佐光信は、将軍足利義政から、人心を惑わす妖物の正体を解くよう命じられる。御所をさまよう血濡れの女や、禍々しい「呪詛屏風」、影を喰らうものや、人の鳴き声を餌にするもの。将軍の心に取り憑き、裏から世を操る「鬼」・・・。光信が怪異の謎を突き止めたとき、真に怖ろしいのは妖物か人か・・・。室町ミステリ。
朱花の恋
出版社:集英社文庫
江戸時代に京都で名を馳せた易学者・新井白蛾。彼の霊能力は、易具である算木に秘められた美しき巫女・朱姫がもたらしたものだった。彼だけが見え、話ができる朱姫との清らかな恋。だが「秘易を手にするものが己のために占えば、力を失う」という言葉通り、自らの運命は杳として知れなかった。京に相次ぐ火難の謎を追ううち、秘易の意味や出生の秘密等が明らかになり――。実在の人物を主人公に占術と恋を描いた時代小説。新井白蛾(あらい・はくが)江戸中期の朱子学者、易学者。正徳五年生まれ。名は祐登(すけたか)、字は謙吉(けんきつ)。織部とも呼ばれていた。崎門(きもん)学派の菅野兼山に師事し、その後、京都に移って易学を研究し、「八卦見の白蛾先生」と呼ばれ、名を馳せた。著書に「古周易経断」「老子形気」など。
無根の樹
出版社:ハルキ文庫
京都西町奉行所同心、榊(さかき)玄一郎(げんいちろう)の元に、手下(てか)の小吉が現れた。堀川に相対死(あいたいじに)(心中)の水死体が上がったのだという。骸が発見された橋のたもとに向かった玄一郎だが、現場には西町奉行所の侍医、久我島(くがしま)冬吾(とうご)の姿があった。この医者は頼みもしないのに勝手に検分をして、同心たちとは全く違う見解を述べるので、評判はかなり悪い。しかも『相対死は三日間、四条河原に晒される』という法度があるにもかかわらず、久我島は玄一郎に、人助けと思って、心中である事実をもみ消せと言い出した。一体何が目的なのか!? しかしこの心中事件が江戸中を震撼(しんかん)させる事態へと発展していく。複雑に絡み合った数奇な運命に、同心と侍医の二人が挑む!!――。
二十年前の事件からすべてが繋がり、最後に残った真実(まこと)とは――
鬼呼びの庭
出版社:PHP文芸文庫
『韓藍の庭』 庭師「室藤」は、薬種問屋から、暴風雨で荒れた庭普請の依頼を受ける。職人たちの世話をする、室藤の一人娘・お紗代はある夜、垣根で隔てられた今は使っていない離れの庭から、子供の声がすることに気がつく。つられて足を運ぶと、そこには真っ赤な鶏頭の花が咲き乱れていた。『時迷の庭』 昔、料亭だった「花下亭」が売りに出され、庭の普請を行った「室藤」の職人、孝太と、庄吉はいらなくなった庭石を引き取ってくる。庄吉はお紗代に石が「もどせ、もどせ」と言っていると話すが、石が話すわけないと言っていたお紗代の前に、大黒姿の老人が現われ、「わしは、あの庭の時標の石じゃ」と話し出す。『人恋の庭』 古物商「好古庵」のご隠居、嘉兵衛は「庭封じのお紗代」の噂を聞き、助けを求めて「室藤」へやってくる。困惑するお紗代に嘉兵衛は「庭が人を嫌っている」と話し出す。庭が人を嫌うはずはないと考えるお紗代は、その原因を探りに元「雪華堂」の本宅があった庭へと向かうと。家族の確執から遺った念、紛れ込んだあやかしなど、庭に関わる不思議な事件を、お紗代が解決する感動の時代小説。
むじな屋語蔵 世迷い蝶次
京都西町奉行所同心の手先の蝶次は、高瀬川の辺で美女と逢う。「女の訪れた家には死人が出る」閻魔の使い女こと謎の質屋「むじな屋」の主お理久だった。大店の娘から、亡き母が秘密を預けていた代償として広大な庭を取り上げられる、という阿漕な話を聞いた蝶次は、義憤から化野のむじな屋を訪れるが……。誰しもが抱く悔恨。それでも前を向く勇気とと覚悟を描く時代小説。
うつろがみ 平安幻妖秘抄
源譲(みなもとのゆずる)は幼くして帝たる父と母を亡くし、東北の鎮守府副将軍として武勇を誇りながらも無欲に生きてきた。だが突然、時の権力者・藤原基経(ふじわらのもとつね)から神霊に憑かれた姫を元に戻せと命じられる。神霊・虚神(うつろがみ)は、幼き頃の約束を果たすなら姫の魂を探すという。譲は約束を思い出せないまま、自分を慕う蝦夷(えみし)の神女・為斗(しんにょ・いと)に入った虚神と、魂がさまよう魔道山に向かう。「魔道山」とはまさに迷いの山のことであり、迷うと山に喰われてしまう…
韓藍の庭 (もののけ)怪異時代小説傑作選
本作は書下ろし作品だ。昨年(二〇一九年)に、『群青の闇 薄明の絵師』『幽玄の絵師 百鬼遊行絵巻』『狂花一輪 京に消えた絵師』と、立て続けに力作を発表した俊英の新作を収録できるとは、アンソロジー冥利に尽きる。なお作者はデビュー作『京の縁結び 縁見屋の娘』から、京の都を舞台にした時代小説を書き続けている。もちろん本作も同様だ。暴風に見舞われた京の町。庭師「室藤」は、薬種問屋「丁字屋」の庭普請を依頼される。急ぎの仕事らしく、「室藤」の娘のお紗代も駆り出された…
狂花一輪 ―京に消えた絵師―
叔父の許で成長した若き藩士、木島龍吾の目は、生まれながらに色を見る力を持っていなかった。その龍吾に、先代藩主は、実の父、兵庫の捜索を命じる。兵庫は出奔後、京で水墨画の絵師浮島狂花として生きていたが、贋作事件を起こして、行方知れずになっていた。狂花の弟子たちを訪ね歩くうちに、龍吾は事件に隠された真相と、狂花の絵の中にある真実を見抜く。それは、兵庫が龍吾と同じ目を持つ証でもあった。
幽玄の絵師―百鬼遊行絵巻―
異能の絵師土佐光信は、将軍足利義政から人心を惑わす妖異の謎を解くよう命じられる。御所をさまよう血塗れの女、奇怪な呪詛屏風、影喰らい、笑い小鼓、人の悲しみから生まれた石。果たして彼が見極めた化生正体とは。人の言霊や将軍の願望を餌に、争乱の気配にほくそ笑む「鬼」とは。
混沌を極める百鬼夜行の時代を描く傑作。
薄明の絵師「群青の闇」
町絵師の子として育った諒は、京狩野家の絵師・五代目狩野永博の許へ弟子入りをする。諒の才能に惚れこんだ永博は自分の娘・音衣と結婚させ婿養子として迎えた。京狩野家の六代目絵師として邁進していたが…。「絵師とは何ぞや」。その答えを求め続ける男たちと、様々な思惑の中で苦悩する女たちを描いた、書き下ろし時代小説。
縁見屋と運命の子
天明八年の大火から五年。貴和と母は、謎の法師に襲われた。通りかかった不思議な少年に助けられるが、翌日貴和の母は失踪する。「必ずお母はんに会える」と少年は告げるが、十一年後に会った彼は、なぜか言葉を話さなくなっていた。そしてある日、貴和の父が描いた辻斬りの芝居絵に酷似した殺人現場が発見され…。すべての事件を結ぶ、貴和と少年の数奇な縁とは?人気シリーズ第二弾!
京の絵草紙屋満天堂 空蟬の夢
宝島社 第15回『このミス』大賞 優秀賞受賞三好昌子 待望の第2作
昔、西国に刀匠ありけり。名を鬼佐次(きさじ)といふ。主命により一振りの刀を打つ。身に経文を刻みし、麗しき刀なり。鬼佐次、「般若刀(はんにゃとう)」と名づく。刀、闇夜に青白き光を放ち、振るたびに女のごとき悲鳴を上げたり・・・般若刀を受けつぎし男は、国を追われ、名と愛した女を捨てた。残された女は過去を捨て空蝉となった。国を離れ京にたどりついた男は、哀しみを心に秘めて生きる女絵師と出会う…
縁見屋の娘
2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』
優秀賞受賞作
宝永の大火の後に、災いが生まれた。縁見屋の娘は、男児を産むことはなく…二十六歳で死ぬ!母も、祖母も、曾祖母も、その悪い噂のとおりの運命をたどった。ある日、修験行者が愛宕山からやってきた。天明八年、行者は娘を救うべく“秘術”を施そうとする…それには京の大半を巻き込むほどの“力”が必要だった…