薄明の絵師「群青の闇」

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著書紹介

薄明の絵師「群青の闇」

あらすじ

町絵師の子として育った諒は、京狩野家の絵師・五代目狩野永博の許へ弟子入りをする。諒の才能に惚れこんだ永博は自分の娘・音衣と結婚させ婿養子として迎えた。京狩野家の六代目絵師として邁進していたが、妻との関係が冷めていくうちに、諒を兄と慕う幼馴染みの夜湖といつしか男女の関係になっていった。一方で、「豊臣家の宝」とも呼ばれ、岩絵の具にすると深い群青色を出すといわれた幻の輝石「らぴす瑠璃」が京狩野家に密かに伝えられているという噂を耳にする。「絵師とは何ぞや」。その答えを求め続ける男たちと、様々な思惑の中で苦悩する女たちを描いた、書き下ろし時代小説。

著者コメント

平成二十五年度、松本清張賞の最終候補になった作品です。

元々、私は油彩画の画家を目指していました。同じ絵描き(なり損ないですが)の目で、「絵師」を表現してみたかったのです。
元来、小説家は、実在する絵師の作品や資料から、想像を巡らせて物語を作ります。私の選んだ絵師、京の狩野家六代目、狩野永良は、早世したこともあってか、ほとんど資料もなく、これといった作品は残っていません。
私は彼のことはほとんど知らないまま、「永諒」という絵師を創造し、自由に絵を描かせました。作中に出て来る絵は、どれも実在しません。強いて言うなら、読み手の頭の中に存在させました。
言葉を絵具にして、読む人の頭の中に絵を描く。そうして創造された絵は、他者には見ることができない、その人だけの物。そういう絵が、この世に在っても良いのではないか。
言霊を操る者としては、それが美しい絵であれば満足です。
ちなみに、私は資料は二割、想像力は八割ぐらいで小説を書きます。資料の分量が多くなると、却ってそれに縛られることになり、イマジネーションが自由に働かなくなるからです(あくまで個人的な感想)。
でも、私は伝奇小説の作家です。ノンフィクション作家でも歴史家でもありません。
言葉を返せば、「嘘つき」です。でも「虚」の中には、大きな「真理」が眠っているかも知れません。何しろ、私は、「シャーマン」ですから……。

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