無根の樹

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著書紹介

無根の樹

あらすじ

京都西町奉行所同心、榊(さかき)玄一郎(げんいちろう)の元に、手下(てか)の小吉が現れた。堀川に相対死(あいたいじに)(心中)の水死体が上がったのだという。骸が発見された橋のたもとに向かった玄一郎だが、現場には西町奉行所の侍医、久我島(くがしま)冬吾(とうご)の姿があった。この医者は頼みもしないのに勝手に検分をして、同心たちとは全く違う見解を述べるので、評判はかなり悪い。しかも『相対死は三日間、四条河原に晒される』という法度があるにもかかわらず、久我島は玄一郎に、人助けと思って、心中である事実をもみ消せと言い出した。一体何が目的なのか!? しかしこの心中事件が江戸中を震撼(しんかん)させる事態へと発展していく。
複雑に絡み合った数奇な運命に、同心と侍医の二人が挑む!!――。


二十年前の事件からすべてが繋がり、最後に残った真実(まこと)とは――

著者コメント

これは、私には珍しく、時代推理小説として仕上げた作品です。とは言え、幻想表現を加えるのは三好の持ち味。これは幻想味を五段階で表すならば、「一度」といったところでしょうか。カレーなどの辛み度合いの、「甘口」に近い感じです。
とても苦労した作品です。完成までに八か月くらいかかりました。理由は未だに分かりません。書いている間、何度も頭の中に「スランプ?」と言う言葉が浮かびました。
この小説は、一話の「鴛鴦図の女」と、二話の「天馬の男」が、単独で完結しながら、一本の作品になるように仕立ててあります。「鴛鴦図」は夫婦愛、「天馬」では、親子愛をテーマにしています。どちらも人の業に重点を置いているので、イリュージョン的ファンタジー味は、最低限度にしました。完成して改めて、理想通りの作品になったと満足しています。お楽しみいただければ幸いです。

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